戯言日記 その14 「ゆーあーひーろー?」

戯言

「おれ、将来ヒーローになりたい!」

「そう言ってる間はなれねぇよ」

 あの人が何故そう言っていたのか、それを学べたのは膝をついた時だった。


 いつからか、不思議な力を持った人々が増えていった。

 不思議な力を悪用するものも、善行に費やすものも、当然と言えば当然の流れだったのかもしれない。

 いつだったか、ヒーローと呼ばれるものが現れたのも。
 憧れる人が多いのも。

「あいつらはヒーローなんぞじゃねぇよ」

 あの人と会ったのはそのころだった。

「えー、みんなカッコイイし人を助けてるよ」

「そりゃあいつらはそれが仕事だからだ」

 当時はよく分からなかったけど、ヒーローを名乗るにはどこかに許可を貰って、どこかに所属しないといけないらしい。あいつらはヒーローを名乗る特殊警備員だ、わざわざそんな名前にするから世の中腐っていくんだってあの人はよく言っていた。

「本物のヒーローってのはな、力があるなしじゃねぇんだ。人に備わってるただ飯が食いたい、眠たい、と同じレベルで心の赴くままに動いた結果が人助け、そんな奴だ。今のヒーローを名乗るやつにもいるんだろうが」

 この後に呟いた言葉が今でも自分の中に残っている。

「ヒーローは仕事じゃねぇんだ、名乗るもんでもないんだ。人よりちょっとがんばった人を賞賛する言葉でしかないんだよ」

 ふと思い出したのは些細なできごとだった。

 どっかの誰かが暴れた現場で胸を張るヒーロー。賞賛のスマホをかざす民衆。

 誰もが憧れる今の世の中の光の舞台。

 その隅で、

「よっと、ほいよ」

「ありがとう!おにいちゃん」

「すいません、ありがとうございます!」

「別に、気ぃつけなよ」

 ガレキの下になっていたぬいぐるみを取り出して母娘に渡していた学生。

 母娘以外には誰も見られず、誇りもせず、逃げもせず、当たり前のやりとりだった。

 でも確かに、彼はヒーローだった。

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 蛇足:自分の中でのヒーロー像って仮面ライダーですね、巻き込まれた系の(電王とか)

 蛇足の蛇足:堂々と人を助けるより!暗躍して助けるほうがかっこよくない!(影の参謀とか大好き)

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